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2014/01/20


何かが落ちていくのが見えたと車掌が言った

悪戯がうまくいった子どものように口元が笑っていたと父が言った

学校を休んでいるのに出かけるなと言うので
じゃあ学校に行くと私は言った
初七日も済んでいなかった

すぐびっくりしたとか驚いたとか言うのねと母は言って泣いた
だっていきなりそこに立ってるからと私は言ってお茶を淹れた
だって怖いからとは言わなかった

くそばばぁと二階から母は叫んだ
私は階下の祖母に言い訳に行った

おいしいものを食べに行こうかと言ってフルーツパフェを食べに行った
これでヘソクリはお終いと母は笑った

洋裁の得意な母だった
水色のレースのワンピースを覚えている
大きな人形を拵えて背負わせてくれたのを覚えている

これはお母さんが読んで一番感動した本よと母は言った
私はその本に何の思い入れもなかった
だからその本はもうない
どこへやったかわからない

私はもう母の年齢を越えてしまった
後悔を抱えているのではない
時折浮かび上がってくる匣をもう一度沈め直すだけなのだから

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